東京都写真美術館へ、
を観にいった。
本橋は東京出身。
社会とその中の人々を50年以上にわたり
写真で記録した。
一方、ドアノーはパリ出身で、
ユーモア交えた喜びの表現が特徴。
異なる背景を持つ二人の写真家の、
炭鉱やサーカス、市場、都市生活など
同じテーマによるルポルタージュ作品が
並列して展示されていた。
残念ながら、撮影の許可は無く、
屋外の壁に巨大に掲載された
ドアノーの作品のみ写真に収められた。
<パリ市庁舎前のキス、パリ>
The Kiss by the Hôtel de Ville, Paris
ドアノーの傑作の一つ。
二人の写真家の作品からは、共通して、リアリティと親しみやすさが感じられた。街角やカフェ、公園などで人々の自然な瞬間を捉えることで視覚的な魅力を引き出していた。
また、両者共に、被写体が自然な状態で過ごしている瞬間を捉えることに注力していた。
撮影される側に、おそらく直接的な指示を与えず、
自由に行動する姿勢を尊重しているように感じた。
結果、写真にはリラックスした雰囲気とリアルな表情が見られた。
心を捉えられたのは、原風景を切り取ったような、作品から普遍的な感情や人間のつながりを感じたことである。
特にドアノーの作品は、瞬間を鮮やかに捉えていた。先に美術展で見たような絵画を思わせる、構図、色彩、光、陰影を巧みに利用して、風景や日常生活の瞬間をリアルに描き出していた。彼の作品は、髪の毛一本にまで、強い存在感と瞬間のエネルギーを伝えていたように思う。見ていて、あまりのリアリティさに、瞬間が永遠に続いているかのような感覚をおぼえた。
写真展を観て、二人の写真家が生み出す物語を通じ、生きることの豊かさについて考える機会となったと思う。いつの時代も、普段の何気無い叙景や感情というものこそ尊く、この感覚が普遍的であるという意味で。